年明けてひと月が過ぎようとしていた週の末日の天満の宮は、途切れる暇なく往来してゆく参詣の人の数多の足取り、そして数多の幼き者の歩みの姿を湛えていた。 参道は表参道を過ぎ、奥へ、奥へと入ってゆく。やがて突き当たるところ神殿の広場。小池のほとりの台座に横たわる黒の神牛(しんぎゅう)は日のこの時を、ひとりの幼女のせわしなきこと止まぬ遊びの相手となった。 時は夕凪の刻に向かう。祀りしみことのおわします殿を見上げる神牛、あそぶ幼女。冬の西日も射し始めたその背を、ふたつおさげの幼女のちいさなやわらかな手がまた触った。
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