新たな年も明けて久しい一月の末の土曜の昼時。世に名のある天満宮(てんまんぐう)の境内は、詣での人々の数多の影のうちに、いつもと変わらぬ賑わいを見せていた。 駅の真ん前より発する表参道は、地の名物を売る店舗の数々が軒を連ねる場所を通り過ぎ、いくつかの池の上を架橋となって通り過ぎ、やがて天神様(てんじんさま)の祀られた宮の大きな神殿にたどりつく。 その傍らの池のひとつ、『奥の境内』の庭園を形作る小さな池のほとりに座り、明き毛色の髪を豊富に湛えた幼女は鯉(こい)を見ていた。 風にたなびく栗色の髪は眉(まゆ)の色と同じ、異人にあらず、紛れもなき由、生まれながらの自然毛。 目下の浅きささやかな池を彩る鯉は、大小多様なそれぞれの姿を水面に映して、また泳ぐ。賑わいのうちに揺れなびく池を、見つめる静かな幼女の孤影を映しながらにたたずむ水面を、ただそそくさと掻き分けながらに、現れてはまた消えてゆく。
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