福岡県(ふくおか-)のほど中央部、大野城市(おおのじょう-)、志免町(しめ-)、須恵町(すえ-)、飯塚市(いいづか-)、そして太宰府市(だざいふ-)、これら五つの街の間に位置してわずかの町域を有する町、宇美(うみ)。その中心部を流れる井野川(いの-)なる川は、町域の南部に流れゆくにしたがってしだいにその幅を細くしてゆく。 　この川の流れが町の中心部を通過し終え、ちょうど貴船(きふね)なる街区の1丁目に差し掛かるとき、その傍に並行して続く集落地の内の一角に小さな地蔵堂がある。 　川と林とに挟まれた区画にあって、川の流れのほとりに並び立つ家々から形作られる集落。この地蔵堂は民家と民家の間に置かれたわずかな区画にある。 　川べりの小道から脇にのびる石段。その先に立つ木造りの堂。安置された2体の石仏。右のものには『地蔵菩薩』(じぞうぼさつ)との刻字、左のそれには『子安観音菩薩』(こやすかんのんぼさつ)との刻字と、奉納者の名であろう『麻生六三　仝モト』との刻銘がある。子安といえば、町の地域一ノ宮たる宇美八幡宮もまたゆかりを持つ菩薩。 　安置された地蔵、それも大基の本尊であろう右のものも含めて、その歴史は詳らかでない。ただ、もともとは近くの川のほとりにあったものが、当地の石工の手によって現在地に移し祀られたものという。 　今にあっても、その子孫たる人の手により、日々欠くることなき小まめな整頓と保全が行われ、手厚く祀られている。 所在は福岡県糟屋郡宇美町貴船1丁目27-11。近場に宇美町立宇美中学校、天理教会、街区の氏神貴船神社などがある。