町の総鎮守として長きにわたりて歴史を刻んでいるその神社は、新たな年明けてひと月が経ったある週の末の日の境内に、普段に増して、参詣の者達の数多の歩みを受け入れていた。 節分(せつぶん)、その祭の日。水色のニット帽子で頭を覆ったその少女は沸き返る人波のうちに、壇上で今まさに始められた、祭事の終わりの局面にあたる豆まきの様を静かに見上げた。 鬼は外―福は内―境内の空を乱舞してゆく豆また参詣の人々の手に、拾われ、包まれ、時にはらわれ、そうしていつしか持ち去られ。薄桃色の唇の隙から漏れゆく少女の吐息にひととき、夕暮れに向かう宮の境内も微かながらにあたためられたり。
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