あまりに有名なその天満宮(てんまんぐう)は、この2月のはじめの日曜の日に、平日に増して多く人々の参詣の姿で賑わっていた。 宮の中心ともいえる本殿の広場。その中央を通る参道は、名物の餅や土産を売る店が軒を連ねる表参道から続いて、やがて本殿に辿り着いて止まる。黒いニット帽の中から巻き髪を垂らして、幼女、そのくるくるの髪を揺らしながらに、泳ぐ鯉(こい)の姿を夢中で見ながらに、小池に架かる石橋の上に時折歩みを進めて、また時折座って水面(みなも)を見つめた。 快晴の午後も過ぎゆく時刻に、天神様の宮の境内は時を静かに刻んでゆく。常世繰り返されそうしてまた繰り返されてゆく風景。幼き歩みに影を落として、夕凪のうちに沈んでゆく。
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