新たな年の明けて間もない正月三が日の日の宮は、名のある天神様(てんじんさま)を祀りて広大なる境内を参道に開き、入り詣でてはまた去ってゆく初詣(はつもうで)の人々の波を湛えて、寒空のもとにありながらもまた、例年にたがうことなき賑わいと熱気をそこに湛えていた。 参道の最も奥なるところに立つ楼門(ろうもん)と呼ばれる壮麗なる門は、御祭神のもとに、天神様の鎮座まします神殿の広場に、参詣の人々をいざなってゆく。絵馬(えま)を奉る人、おみくじを引く人、御祓(おはら)いの間に入ってゆく人、賽銭(さいせん)を投げてしばしの時を合掌ながらに黙祷する人、・・・。 それぞれの順でそれぞれの姿で詣でに興じる数多の人の、その波のうちにごったがえす境内。そのさなかで大きな影をまわりに、その黒目がちな瞳はあたりをきょろきょろ。時には地面をしばらく見つめて、そしてふたたびきょろきょろと。 賀正の境内に過ごす人々の影は途切れることを知らない。 声たてることもなくしばらくのときを、迷幼女(まよいご)は静かにたたずむのだった。
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