新たな年が明けて間もない三箇日(さんがにち)の日の午後の境内は、福をそこに祈願しようと、胸に秘めたる願いを祈念しようと、新たな年の訪れをその名のある神社で過ごそうと、などなど十色の想いに導かれつつにそこに来訪したる人々の賀正の息吹で満たされていた。 宮の境内の東のはずれ。 横縞模様のセーターの上にマフラーを巻いたちいさな幼女は、宮のトイレを前にひとり、その場にちょこりと立っていた。 とどまるときなく横を過ぎていく大きな人たち。 動かない。 時に髪を撫でていくさむい風。 動かない。 幼女、うごかない。 夕刻に向かう午後の境内は、向かう夕刻にその初詣を、日の落ちる前にその初詣を済まそうと参詣の路を歩む人々の数多の影のなかで、だんだんしだいに、まただんだんと、賑やかさの度を増してゆく。 幼女、動かない、もうちょっと。 年の幕開けのうちにしめやかな、やわらかなそして淡やかに薫る、澄みきりわたった寒空のもとにほのかにあたたかな空気のなかで。
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