静まり返った夕のその間(ま)にまばらな人の影を湛えて、街の離れの図書館は徐々に閉館の時に向かっていた。 館の片隅に置かれた一間。 その髪にカチューシャをあてた幼女は、木造りの椅子にその腰を掛けて、机に置いた絵本を一頁、また一頁、と、めくってゆく。 ひらかれる頁を横からのぞいて、黒髪垂らした幼女は静かに、その物語の進みをつかさどる幼女のその片の頬に静かに、その熱おびた吐息と、かすかなささやきの声を当てかけた。 冬も終わりに近づく街に、夕のはじまりの陽光が射した。日の移ろいをまたそこに告げて、光は街路をやわらかに照らし、静寂のなかにささやく幼いふたりの背中を、ひととき照らした。
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