大いに賑わう市街。五月のはじめのこの日に数多の人々が街に織り成す熱気は、日を跨いで繰り広げられる盛大なる祭(まつり)の囃子(はやし)とともに、初夏の街路を飾っていた。 　各々の装束で身を包んで、普段は車の通り道としてある大通りを練り歩くだしの者達。その声と音の彩る喧騒からやや離れたところにこの日も緑をたたえる大きな公園、そこは祭のときらしく、種々の露店が軒を連ね、祭に訪れた者達のゆき交う憩いの場所ともなっていた。 　園の一角は即席ながらの舞台への様変わりを遂げていた。踊りや歌や太鼓などなど、各々の持ち寄った出し物を順に披露してゆく老若男女。幼女はそのうちのひとりだった。 　黄色の花を頭に咲かせて、真っ赤な口紅を塗った唇に、飾り化粧の桃の白粉(おしろい)。踊り子の衣装にその身を包んだままに、幼女はその身を抱かれてしばし、寄る肩から向こうにあるなにかを見つめた。 　もうすぐ仲間たちと舞台に立つ。そして軽快な歌を背後に、たくさんの人の前で舞うのだ。 　ゆく人の肌に夏日を感じさせもする皐月(さつき)の風が吹き抜け、午後の市街は大いなる盛りの時に向かって賑わいを増していった。