夏も終わりに近づく時節にその官幣大社に六日にわたって繰り広げられた名のある祭も最後の〆(しめ)の日を迎えていた。 長大に続く参道の脇に軒を連ねる数多の出店。いくつもの鳥居をくぐった先に―突き当たりに聳える楼門の向こうへと練り歩いてゆく稚児(ちご)の子供たち、夏祭の風情を愉しみながらにその模様を見物する者たち。 ・・・数多の人々の歩みの姿の傍ら、奥に鎮座するこの宮の本殿のなかに、ひとつの儀式の前座が今まさに執り行われようとしていた。宮司に囲まれながらの正座の稚児たちのハレの姿を見やり、しめやかにそこに過ぎる午後。・・・幼女もそれを見る客のひとりであった。 手押し車―乳母車(うばぐるま)―ちいさなベビーカーに収まりつつ、静かにおとなしく過ごす幼女のお祭の午後のひととき。 海を、山を、あらゆる自然を・・・万物の殺生を戒め、その生命をいつくしむ―遥かなる古の時代からの歴史をたたえた大いなる祭礼もそうして、待ち控える季節を見据えつつ、今年のハレの終幕の時に向かって穏やかにうつろっていった。
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