すべてが奔放―そうたびたび評されてしまうこの地は九州北方。福岡市域の東方を湾曲して北に流れる御笠(みかさ)川の左岸の一角にあって、右岸方の空港から飛び立ち去りゆく空をつんざく旅客機の音と、川に平行して市街を南北に貫く車道を往来する車で、あたりは喧騒に呑み込まれて今に在る。弥生時代の遺跡で知られるこの区域には川の左岸域に沿って複数の小学校。四方に登下校する児童達の声はこの地の諸刻に賑わいを飾る。西暦2006年6月も終わりの夏迫りくる青空のもとで、その背の大部分を占めるほどに身体に比して大きいランドセルを背負って、小学校からの帰路をゆく帰り人然とした幼い少女は、しばし路上に立ち止まったすえにその手を互いに握ったままに、また北へとむかって小さく歩むのだった。
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