一角は往来する車で騒がしい。ちょうど二十四節気をもって寒露(かんろ)ともいわれる秋入の日に近づいた日の昼時。にあっても冬はまだまだ、と終わりかけの夏を思わせる暖気に包まれた街の路傍で、少女は横断歩道を前にまた行き交う車の群れを前に、信号の変わるときを待っていた。 その外観のみからも殊に優れた吸水性とやわらかさを感じさせる桃色の布の帽子―それはお風呂あがりやプールあがりの濡れ髪にタオルの代わりにまとうような、ナイトキャップとも呼ばれるような―パジャマを思わせるニットを頭に。緩やかなパーカー、緩やかなパンツ、いずれにしてもそれは緩やかで、緩やかでラフな出掛けの姿で。 土曜日。そんな休みの女子小学生を思わせる少女は、向こうにコンビニエンスストアを見る横断歩道の片側で、時に顔上げ、またうつむいて、その自転車にまたがるままにその場で、しばしのときを待つのだった。
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