去りゆく少女は振り向かなかった。 ゆるやかな丘陵の上に広がり真新しさを端々にのぞかせる住宅街の一角にあって、その公園はある日の日曜日の午前の時にいつもと変わらず開かれていた。 砂場にブランコにアスレチック。そんな遊具が置かれた小さな公園で、そんな町の小さな児童遊園で、ブランコに遊んで、ジャングルジムに遊んで、またブランコにしばしの時を揺られて、、、と、しばしの時を遊んだ少女達のうちに、ひとりその場を離れた少女と、その背を見送る少女がいた。やわらかな生地のスパッツを穿いてその髪をなびかせる夏のいでたちの細身の少女は、ブランコに遊ぶ少女を傍目に、去ろうと自転車に乗った少女を黙して見送るのではなかった。少女は去ろうと歩く少女を見やって、靴をかえしてよと叫ぶのだった。足に針がささるよと続けた。 休みの日にあって暇を持て余す女子小学生を思わせる少女はふたりだった。もってひとりになった少女はひとり、その一角でまた静かに時を過ごし始めるのだった。 |