地は九州北部。春日(かすが)市は福岡県(ふくおか-)の中央部に位置する小さな市で、市域内に鎮座する地域一ノ宮春日神社をその名の由来としている。 東向きに座するこの宮は、その境内より東の方角に向かって細い参道を伸ばしており、その道が途切れた末に続く道を更に東へ進むと、やがて、大野城市(おおのじょう-)南部の牛頸山(うしくび-)より発する二級河川、すなわち牛頸川と呼ばれる川に当たり、そこには御潮井橋(おしおい-)と名づけられた橋が架かっている。 この橋の西のたもと、ちょうど橋の春日神社側のたもとの一角に、川のせせらぎをその脇に湛え大きな樹木を脇に据えて、一見で神社であることを思わせもする小さな祠が祀られている。
祠の名は九郎天神(くろうてんじん)。
創建歴年は不詳であるという。春日神社の史料のひとつである『春日大明神記録』に『供老大明神は御祓川の側におはします。』と、江戸期の儒学者・本草学者たる貝原益軒(かいばらえきけん)の編纂によるこの地に名のある史書『筑前国続風土記』の『附録』に『春日神社の艮(うしとら)二町ばかり、道の傍に大楠一株立り、樹下に石神あり、黒男大明神という。』と、また同書の『拾遺』に『黒男大明神東二町許祓川の辺大楠の下に在。石神なり。むかしの祭田とて村の東に、黒男免といふほのけの田有。』と記されているものという。古くは"オクロウサマ"などとも呼ばれた社で、ほど近くにある三郎天神(さぶろうてんじん)や地禄天神とともに春日神社の末社であり、春日神社の年中行事たる婿押し祭の流れのひとつであるお汐井取り(おしおいとり)の場ともなっているという。
右脇の道を直進すれば長円寺の門を通り過ぎ、やがて春日神社の参道に入る。
所在は福岡県春日市春日2丁目123番及び124番。ほど近くに奈良松山、ミソ石などがある。
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