地は九州北部、福岡県域の南東部に位置する大野城(おおのじょう)市。牛頸(うしくび)と呼ばれる地区は市域の南の外れの自然豊かな場所である。 市域内を流れる二級河川たる牛頸川の上流域には、牛頸山と河川の源たる牛頸ダムが存在している。この庚申塔は、牛頸ダムと、この地に古くから鎮座するものと伝わる平野(ひらの)神社との間の地点、正確な所在をつつじヶ丘とする場にあって、発して間もない牛頸川の東岸の一角にたっている。 界隈は夏季に入って間もない時期に蛍―ゲンジボタル―が飛び交うことで知られる場。鬱蒼と雑木の茂る辺り一帯は、古くはまさしく辺境といえる辺鄙な集落地であったものと伝わる。斯様なる場所に立つ庚申塔。これは晴れ渡る夏空のもとに静かな昼の刻、セミの鳴声の止むことのない暑い夏の日の一刻の姿である。 |