九州北部、福岡県の中央部やや西に位置する糟屋郡(かすやぐん)は宇美町(うみまち)の町域内に、炭焼(すみやき)という大字(おおあざ)で表される地区が二つある。ひとつは町の中心地にほど近い場所、もうひとつは町の西部の山々に囲まれた場所である。この庚申塔は後者、南に四王寺山脈、大野城(おおのじょう)跡などが存在する、太宰府市域の北端に程近い場所に位置する街道筋の集落の一角に建つものである。炭焼は大字であり、その下は小字(こあざ)にて大正町(たいしょうまち)、原田上(はるだかみ)、原田下(はるだしも)、原田中央区、府内(ふない)、明治町(めいじまち)、内野谷(うちのたに)、大谷(おおたに)、山神町(さんじんちょう)との九区に分かたれているはずであるが、この庚申塔のある区画がこの九区のうちのどれに該当するものであるのかは今には定かではない。小さな集落ではあるものの、その奥部には神社も存在していた。街道を北上すると貴船(きふね)地区を経てやがて宇美八幡宮の鎮座する中心地へと到る。その筋にたたずむ静かな集落に塔もまた静かにたたずんでいた。撮影は西暦2005年8月12日。蝉の声止まぬ暑い日の一刻であった。
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