信号の変わる時を待つその少女は、自転車にまたがり座るままにしてその手の指を一心に触る。地点はこの地を北へと流れる二級河川の東の岸の街の一角、そこに架かる橋梁を東に真っ直ぐに進んだ十字路だ。川の対岸には広大な自然公園、また近くに小中学校などもあるこの地点は、車の往来が止むことがない。
小学生の高学年風。少女はカゴにタオルなどを入れたスポーツ仕様の自転車にまたがって、南にその顔を向けていた。薄いピンク、あるいは陽光の度合いではイエローにも見えるワンピース。長い黒髪をおおうブルーの帽子、夏の陽光に映える白い肌、けれどやや日に焼けたブラウンの肌。やがて少女は信号の変わるせつなに体勢を立て直してハンドルをにぎり、セミの鳴声の延々とこだまする街の一角を南へとこぎだしていった。
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