比良松(ひらまつ)とされる地域は、福岡県(ふくおか-)の南部東方に位置する朝倉(あさくら)市域の中南部、この地が筑前国(ちくぜんのくに)であった時代には上座郡(かみつあさくら-)に属し、江戸期の儒学・本草学者たる貝原益軒(かいばらえきけん)の編纂によるこの地に名のある史書"筑前国続風土記(ちくぜんのくにしょくふどき)"にも『比良松』として登場、明治の代に宮野村、その後朝倉町属の変遷を経て、西暦2006年度の二町一市(甘木市、杷木町、朝倉町)の合併により朝倉市属となった地域である。 この山王神社(さんのう-)なる小さな宮は、この地を貫く国道386号と、これと平行して走る大分自動車道(おおいた-)とにちょうど挟まれた宮野(みやの)地区の内にあり、近場に行政センター(旧朝倉町役場)、市立(旧町立)比良松中学校などの施設を擁する集落の一角に鎮座している。 『比良松 上下二村、大道にある町なり。宮野村に属せり。今は別村となり。むかしは平松の字を用ゆ。寛文元年より文字を改む。下の比良松町の街道に松樹あり。其枝四邊に茂りたひらか也。故に町の名を比良松と称す』...(筑前国続風土記)。祭神や縁起を説明するような事物は境内のどこにも置かれていない。ただ、表鳥居とみなすことのできる西側宮口の鳥居には『山王神社』との額が掛かるが、裏鳥居とみなすことのできる東側宮口の鳥居の額には『日吉神社(ひよし-)』とある。このことから、同旧筑前国域の博多(はかた)比恵町(ひえ-)にある山王日吉神社と同一もしくは似た性格の宮であると推測することができる。 比恵町の山王日吉神社が祀るは、大山咋神(おおやまくいのかみ)、大己貴大神(おおなむちのおおかみ)、大物主神(おおものぬしのかみ)の三神である。
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