福岡県の中部西域。博多湾に流れ込む河川那珂川(なかがわ)の源流を湛える那珂川町は、同県の県都たる福岡市の南方の街区南区(みなみ-)と町域の北で接し、春日(かすが)市と町域の東で接し、また筑紫野(ちくしの)市・大野城(おおのじょう)市と南方で接し、山を越えて佐賀県とも接する、自然豊かな町である。 その数膨大なる太古の遺跡で知られるこの町の、その北部西方は山麓地。片縄(かたなわ)山と呼ばれるその山は、その西の荒平(あらひら)山に連なり各所で那珂川町域と福岡市域とに接し、西の麓に日吉神社などが座する谷集落、また内野(うちの)・脇山(わきやま)地区(福岡市域内)などを見下ろしている。 斯様なる片縄山の東の麓に位置して存在する街区のひとつが、那珂川町内の道善(どうぜん)街区である。この街区は、町に唯一の公営住宅を擁する恵子(えこ)とされる街区の南側に位置し、恵子街区の主に3丁目と接し、1丁目から5丁目までの区域と大字の区域とで成されている。そのうちの大字の区域―すなわち大字道善の区域、その最北、ちょうど恵子街区の最南部3丁目との境界を間近に擁する地点、その車道の脇の雑木林に小さな神社が存在している。すなわち『天神社』。宮口に立つ鳥居を過ぎ、石段を上がった先にたたずむささやかといえるその境内には、小さな石仏と木造の拝殿、特に目立つものはそのほかに見られず、由来や縁起を示す事物もない。
が、町教育委員会の編纂による郷土史料のひとつである『郷土誌那珂川』がその一頁において、道善地区の『田神社』として次のように説明している。
"田神社"といえば、拝殿の中に掛かる神額にある通りの名である。埴安命・・・福岡の地の各所に数多く鎮座する『地禄神社(じろく-)』が多く祀る、日本神話にもその名を現す土の神、大地の神。
所在は福岡県筑紫郡那珂川町大字道善311の北隣の区画。近場に蓮教寺、天理教会、那珂川(キリスト)教会、町立恵子児童館、町立町民体育館などがある。 |