名のある天満宮(てんまんぐう)の奥の境内の庭園に湛えられた小さな池は、様々の色、様々の大きさ、実に様々の姿を見せる鯉(こい)たちの泳行のうちに賑やか。 幼女は、参道の脇に軒を連ねる出店で買ったのであろうアイスクリームを片手に、小池のほとりに立って、口のまわりについたチョコレートを気にすることもなきままに、あるいは気づくことなきままに、水面に映る色とりどりの鯉に夢中になっていた。 現れては消え、また現れては泳いで過ぎてゆく数多の影を、傍で眺める薄毛色の幼女やほか様々の幼き影と同じように、邪もなき様に、見ては心を躍らせるようにその跳ね姿を水面に映すのだった。 |