地は福岡県(ふくおか-)。万葉の古都太宰府市(だざいふ-)の宝満山(ほうまん-)に源を発し、大宰府市域、大野城(おおのじょう)市域、福岡(ふくおか)市域と北に向かって流れてやがて博多湾に注ぎ込む二級河川がある。すなわち、『日本書紀』などにも登場するところの古の森御笠の森をその名の由来とする御笠川(みかさ-)である。 この川の流れがちょうど福岡市域に入ろうとする地点、そのわずか直前の地点。すなわち大野城市域と福岡市域の境界地点のわずか南に、仲畑(なかはた)と呼ばれる街区がある。一丁目から四丁目までの区域で成されるこの街区は、御笠川の左岸すなわち西岸の河原といえる場所に、川に沿って細長く広がる集落地で、真新しい分譲地の数々と古い町の面影とを同時に湛えて存在している。 その内の北側の区域にあたる一丁目の、川の流れにほど近い場所にその社領を有する小さな宮がある。 『地禄社』... "じろくしゃ"、または"ちろくしゃ"、そう書かれた鳥居の額は、宮が土をつかさどる神とされる『埴安命(はにやすのみこと)』を祀る社であることを示している。
その正面を北に向けた宮口。その手前右脇に並ぶ何らかの石柱群。鳥居と注連縄をくぐったすぐ左手の古木の根元に何らかの石の祠が一つ。拝殿の内部に並び掛かる絵馬は、宮が周囲の仲畑(仲畠とも)の民を氏子としてきたことを示す。境内の奥に座する本殿の脇にも何らかの石祠が一つ。その近場に置かれた『遥拝』の石柱の傍にはブランコなどの遊具がたたずんでいる。
〔地禄神社〕
『地禄神社』は、この宮のほど近く南に位置する同仲畑街区の三丁目にも、それどころか、福岡の地の各所に同じ名称を冠して存在する神社である。しかしそれらのいずれも特定の神社の末社たるようなものではなく、同じ神『埴安命』を祭神として同じ名前を宮の名として持ちながらも、いずれの『地禄神社』も本社といえるものは持たず、その起源を不詳としている。埴安命は、波邇夜須毘古神(はにやすひこのかみ)、埴安神(はにやすのかみ)とも呼ばれ、日本神話にも登場するところの、土の神、大地の神として崇め祀られる神であるという。 『地禄』とは、大地より与えられる恵、"土地を富ませる"の意味であると考えられている。
所在は福岡県大野城市仲畑1丁目29番。 西方に九州管区警察学校、福岡市立板付(いたづけ)小学校。 南西方に福岡市立板付中学校および福岡市立埋蔵文化財センター。東方御笠川の対岸ほど近くに国指定史跡金隈遺跡(かねのくま-)。 同じ街区(仲畑)内の南方近場に畑詰地禄神社。南東近場に架かる橋を渡った先の地点に大野城市立御笠の森小学校。 南方に浄土真宗の寺院たる慶傳寺などがある。 |