地は九州の北方、福岡県(ふくおか-)。そのうちの、福岡(ふくおか)市域の南東の区域と大野城(おおのじょう)市域の北方の区域との境界地点の連なる界隈に、雑餉隈(ざっしょのくま)という地名がある。 江戸時代の儒学・本草学者貝原益軒(かいばらえきけん)の編纂によるこの地に名のある史書『筑前国続風土記(ちくぜんのくにしょくふどき)』にも現れるこの地名は、かつて界隈に存在した宿場町の呼び名、今には西日本鉄道天神大牟田線の駅雑餉隈駅の周囲に広がる歓楽街(その中でも特に性風俗街)を指すことで広く知られている。かつて存在した宿場町たる雑餉隈は、筑前国続風土記において『御笠森の西にありと』描写された街、現在の福岡市博多区春町(はる-)の周囲一帯、今にある"雑餉隈歓楽街"と大方一致する場所といえる。『御笠森』とは、大野城市の指定史跡として今に保存されている御笠の森のことである。  | 『雑餉隈』界隈 |
 | 『筑紫通り』の脇に鎮座 | さて、この雑餉隈という地名を公称として今に継ぐのは、大野城市の一街区、上記福岡市春町と隣接するところの、雑餉隈町(ざっしょのくままち)のみとなっている。一丁目から五丁目までの区域を有するこの街区は、北方の博多(はかた)へと連なる大きな車道、通称"筑紫通り"の西脇に位置し、その大部分を宅地としている。斯様なる街区の一角に、大道を脇に座する小さな宮がある。これすなわち事代主神(ことしろぬしのかみ、通称恵比須さま)と火産霊神(ほむすびのかみ、通称愛宕さま)を祀る、雑餉隈恵比須神社(ざっしょのくまえびすじんじゃ)である。 その縁起については、創建の年代は詳らかでないというが、中世以降にあって博多(はかた)宿と二日市(ふつかいち、現在の筑紫野市二日市)宿のちょうど中間に位置して間の宿(あいのしゅく)として旅籠(はたご)や茶店や日用雑貨の商店が軒を並べて繁盛するという、いわゆる宿場町であった雑餉隈地区をその鎮座の場とすることから、商売繁盛の神である事代主神と、防火の神であり疫病の侵入を防ぐ塞神(さえのかみ)でもある火産霊神を宿場の鎭護の神としてこの地に勧請したものであるという。
祭神
例祭は、4月10日の春ごもり、7月24日の夏ごもり(愛宕祭り)、10月10日の宮座ののちに、12月10日から2日間行われる恵比須祭りでこの地をかざる。境内の脇にある公民館はその際の舞台にもなるという。
 | 鳥居と額と上の空 | 所在は福岡県大野城市雑餉隈町3丁目3番7号。最寄の鉄道駅は、西日本鉄道天神大牟田線春日原駅、またはJRならば春日駅(南方)、南福岡駅(西方)。 ほど近く北方に、大野城市山田街区内に地蔵を安置する山田観音地蔵堂および浄土真宗の寺院慶傳寺および山田宝満神社、同市筒井街区内に古井戸の遺構たる史跡筒井の井戸、また福岡県指定有形文化財たる仏像を祀る雑餉隈町観音堂が。南方ほど近く、錦町(にしきまち)の商店街のさなかに日蓮宗の寺院妙教寺が。 西方ほど近くには那珂南小学校、元町十日恵比須神社などが。 南西ほど近く、春日原北の住宅街の内に春日原北第2児童遊園、およびJR春日駅の付近まで下れば豊川稲荷(とよかわいなり)の別院たる神宮寺最勝山東慶院などがある。
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